−著作権・グロス・ネット・そして後悔ー
 サイン研究室がちょっと立ち往生している。その切っ掛けは、日経新聞の7月18日朝刊の記事。「無断コピーは違法です」という記事が原因。記事によると「・・・著作者の許諾なしにコピーをしたり、パソコンに取り込むことや、インターネット、電子メール、ファクス等に利用することは違法となります。(詳細を社会面に)社外に配付する印刷物や電子媒体はもちろんのこと、社内で業務上おこなわれるこうした行為は、少部数であっても、著作者の許諾なしに行うことはできません・・・」つまり、この事に対して、抗議しようと文章を載せただけでサインクラブは違法行為を犯してしまうわけだ。
 何故、日経新聞を買っているかと言えば、情報を買っている訳である。その情報は読むだけで、それ以外に使ってはまかりならん。と、言うことらしい。頭に入れた上での要約もいけないらしい。
 さて、困った。筆者は日常的にサイン関連の仕事をしており、政治関連、経済関連、自治体関連の情報を自分で調べることなど、ネットがあるにしても、時間的に不可能である。
 そんな人間が何かを他者に伝えようとするとき、プロが調べた文章を引用して説明をしなければ、何も伝える事ができない。だから、著作物を買う訳である。
 この事で奇妙なのは、日経新聞から購読契約の見直しをするための契約書が送られてこない事である。もし、この事
「無断コピーは違法です」で大きな損失を負っているのであれば、今一度厳密な契約書つくり、契約をやり直せばいいのではないのか。・・・筆者は契約しません。これは、皮肉です。

 さて、本題に入ります。
 今回のこの記事で、サインクラブは著作権について考えさせられた。サインクラブのイメージ素材も同じ著作物である。素人がいろいろと無い知恵をしぼってイメージ素材のライセンスの許諾を決めたのだが、どこかまだ、釈然としない部分もある。これは、利用してもらう上での利便性と関わってくるからだ。著作権側の意見だけでが正しく合理的であるとは、思い切れないのである。
 日経新聞の著作権とサインクラブのイメージ素材の著作権の違いは、一言で言うと、「グロス(名目値)」と「ネット(実質値)」の違いである。それ何の事だ?と言われても、筆者にはうまく説明できない。日経新聞の著作権は「グロス(名目値)」・サインクラブのイメージ素材の著作権は「ネット(実質値)」であるとしか言い様がない。それが著作権という一言で片付けられているわけである。
 実はこの言葉も日経新聞(2002/6/11朝刊)から知った。記事を読んでもらえれば話しが早いのですが、それでは、違法になってしまう。この記事を書かれたのは 、米州総局篠原洋一氏という方です。あまりにも上手い表現なので、ほとほと感心し尊敬してしまった。日経新聞にではない。
 やっぱり、ここに載せないと説明できないようです。
日本経済新聞2002/6/11朝刊より
地球回覧「錬金術」に酔った米国経済
 一九六〇年代、評論家の笠信太郎氏は高度成長に酔う日本を「花見酒の経済」と表現し、警鐘を鳴らした。もとになったのはこんな古典落語だ。
 花見客に売りつけようと樽(たる)酒をツケで仕込み、釣り銭用に十銭硬貨一枚を懐に出かけた熊と辰。途中で我慢できなくなった熊が「カネを出せば自分で飲んでも構うまい」と十銭を辰に渡し一杯飲み干す。辰は「おれにも一杯」と受け取ったばかりの十銭を熊に支払う。
 これを繰り返し、到着した時には二人ともすっかり上機嫌。二人が空っぽの樽を前に「随分もうかっただろう」と財布を逆さにしたら出てきたのは十銭硬貨一枚だけ。文字通り、酒屋へのツケに苦しむ結果に終わった。
 笠氏はカネやモノが盛んに取引されても本当の価値を生まない日本経済の姿を花見酒になぞらえた。だが二十一世紀の米国にこれほど多くの熊と辰が出現するとは想像しなかったはずだ。
 「エンロンは特殊例。エネルギーの取引商杜というビジネスモデルが失敗したわけではない」。エンロンが破たんした昨年末、同業界二位のダイナジー経営陣は豪語した。それから半年。エンロン追い上げに懸命だったエネルギー各社が「往復取引」という花見酒に酔っていたことが明らかになってきた。
 例えばA社がB杜に一定量の電力を五千万ドルで売る。時を置かずにB杜は同量を同価格でA杜に販売する。両社ともこれだけで五千万ドルの売り上げを手にできる。いくらで、どれだけ売るかは両社次第。一億ドルで売買すれば、それだけ売り上げが増え、相場をつり上げることもできる。
 エネルギー大手のCMSエナジーは昨年、往復取引で三十億ドル近く売り上げをかさ上げしたとされる。株価は急落、マコーミック会長は辞任を表明した。CMSと往復取引を繰り返していたダイナジーのワトソン会長も株主総会で「信用間題は危機的」と漏らした直後に退任に追い込まれた。
 花見酒の種類は一つではない。グローバル・クロッシングなど破たんした新興通信会杜が手を染めていたのは「交換取引」。往復取引は売り上げの水増しが狙いだが、こちらは利益も膨らむ。より巧妙な取引といえる。
 通信回線を保有するX杜とY杜がそれぞれ余った回線の「空き容量」の使用権を相互に売買する。販売した使用権は売上高に計上、購入分は設備投資と見なし二十年かけて償却する仕組みだ。減価償却費分しか営業費用が増えないため、売り上げとの差額はそのまま利益になる。
 極論すれば、二社が取引するだけで顧客がいなくても収益は増える。グ口ーバル・クロッシングの売上高は二〇〇〇年までの二年間で九倍になった。元幹部は「公表された収益が実態とかけ離れている」と告発する。
 うっかりか意図的かは別にして、これらの"錬金術"に共通するのは「ネット(実質値)」と「グロス(名目値)」のすり替えだ。大切なのは売り買いの差額であるネットであり、同じ量のモノやカネが行き来してグロスが膨らんでも付加価値は生まれない。
 グローバル・クロッシングのレジヤー最高経営責任者がいくら「交換取引については正確に情報開示してきた」と主張しても、ネットとグロスのすり替えを外部から見抜くのは容易ではない。ケリー下院議員は「投資家がだまされた可能性がある」と批判する。
 景気回復を裏付ける指標が数多く発表されても、米株式市場が活気づく兆しは見えない。テキサス大学のヒュー教授は「どこに疑惑が潜んでいるか分からないという疑心暗鬼が米国の株式文化を変えるかもしれない」と指摘する。米経済はまだ花見酒の二日酔いに苦しんでいる。
 (米州総局篠原洋一)
 以上です。
ここに書かれている示唆は、貴重であり、肝に命じておかなければならない。

 が、もし、著作権に関して、評論家の笠信太郎氏・遡って古典落語の「花見酒」・テキサス大学のヒュー教授・グローバル・クロッシングのレジヤー最高経営責任者が、それぞれ自分の意見に対して、著作権を主張し出したらこの記事は成立できるのだろうか、と考え込んでしまう。(筆者には、「花見酒」が古典落語なのかは知らないし、3人の方々にもお会いした事もない)
 筆者には、この"錬金術"「ネット(実質値)」と「グロス(名目値)」のすり替えが、ビジネスモデルとしては違ってはいるのだが、そのまま日経新聞の著作権の主張に当てはまるような気がするのである。ネットのふりをしながら、グロスで潰す。まさに言葉の錬金術である。
 百歩、千歩譲って、これこれこうゆう理由で、日経の批判をしたいから、日経の記事を使いたいと日経にお願いする。OKするかしないかは、日経次第。これって、検閲てこと!?。

 最大の問題は、日本では、経済関連の大手新聞社が日経新聞しかないというところにこの問題の根源がある。末席にいる人間にとって、代わりになる情報源がないのである。つまり、独占しているということである。もし、こまま日経の主張が正しければ、誰も日経の引用もできなくなるばかりではなく、批判すらできなくなる、と考えてしまう。
 日経新聞の記者は、記事を書く際にこんな内容の記事を書くので、貴方の名前を使わせて下さいと、頼むのだろうか?内容は、こうのようになります。その上、この記事の著作権は日経新聞にあり、貴方には使用権はありませんと、貴方の考え方も日経新聞のものですと、説明するのであろうか。

 サインディスプレイの身近な事で言えば、飲食関係で紹介された店の記事を、宣伝のために店の前にコピーをとって貼っておく事がある。これも厳密にいえば、許可をとらなければ違法行為となるはずである。

 独占という行為で経済の停滞を生むのは、許される事ではないのは当然のことである。それでも、著作権は守るべか?という前に、筆者の意見は、日経新聞の著作権は「グロス(名目値)」・サインクラブのイメージ素材の著作権は「ネット(実質値)」であると、申し上げたい。同じに見えていても、その実質は、まったく違っている。これは、区別されなければ話しは前に進まない。

 見せかけの著作権・バブル化する著作権・判断不能になる著作権・個人の存在を否定する著作権・情報の独占を生む著作権。

 多分、法律的には著作権にネットもグロスもない、と言う事は容易に想像できる。筆者には、法律的な問題はわからない。わからないから許してくれとは言わない。しかし、自分の人生において、いろいろな事を要約して生きてきており、そのすべてが翻訳に当たると言われたら、法律の事はわからないにしても、人間てそもそも何者なの?と聞きたくなる。

 デサインの最初の勉強は、真似である。かっこいいものを真似る。そして、また、真似る。ある時、気がつくとほんの少しだけ、オリジナルが見えてくる。それとてすぐに真似られる。これは、悪い事ではない。真似て真似て、批判し、自分の中のオリジナルを探しているだけである。

 話しはちょっと違うが、独占の恐さを伝える為に数少ない実体験から一つ例を上げてみる。このサインクラブのあるサイトのドメインはdunit.comになっている。これは、.comがカッコイイからとった訳では無い。ほんの5年ほど前、日本では、個人がドメインネームを取得できなかったために、仕方なしにアメリカでとったのである。インターネットの世界の利権と独占を誰かが画策しようとしたのである。が、できないと気付くまでにたいして時間はかからなかった。
 そして、IT革命だ、ベンチャービジネスと今さら騒いでいる。たいして時間がかからなかったと書いたが、実は日本にとってその時間は取り返しのつかないものになってしまっている。独占とは、独占の欲望とは恐ろしいものである。特に、著作権を盾に使う企業は、恐ろしい。
 これからはITだとか言いながら、その裏では、著作権を盾に、ITなんか潰してしまえと言うているような気さえしてくる。
 さらに言えば、サインクラブの著作権が社会に与える影響は無に等しいが、日経新聞の著作権の主張は、社会に与える影響は恐ろしいものがある。
 もし、サインのデザイン・インテリアのデザイン・ファニチャーのデザイン・照明器具のデザイン、その他もろもろのデザインに対して、厳密な著作権を人々が主張しだしたら、社会のコストは異常に高いものになるのは、目に見えている。そうしたことに耐えるシステムが今はない。これを支えているは、法律ではなく、信用取引という日本の商習慣である。(信用取引については、機会を改めて書きます)
 この信用取引という商習慣には、欠陥も多い。というより、欠陥だらけである。だが、この方法論の根底には、「ネット(実質値)」がある。ここの問題解決が先である。

 筆者がサインクラブとして、問いたいのは、これからのサインビジネスというサービスをおこなう側の権利と、そのサービスを受ける顧客の利便性の問題である。顧客の利便性の上に、われわれの仕事がある。著作権の上にはない。顧客の利便性を無視したサービスなど、無意味に思えるからだ。
 もし、我々のデザインしたもの、製作したものに対して、一々著作権を主張したとして、そんなサービスを誰が受け入れてくれるのか?と言って著作権が無意味だ言っているのではない。今、この事に対して、どのようなモデルが必要なのかを問いたいのである。

 まず、それらサービスを考える上で元となる知識が、著作権という法律で本当に使用できないのであれば、栄えるのはお金の払える巨大企業だけである。
 ほんの何十年か前、貧乏人は、麦を食えといった総理大臣がいた。今は、貧乏人は新聞を読むな、読んで考えて喋るな、喋ると犯罪者になるぞ、という理屈か。

 ビジネスモデルが違うが「グロス(名目値)」と「ネット(実質値)」をすり替えて失敗したのは、われわれの世界で言えば、ゼネコンである。

 何故、この事がマスコミで取り上げられないのか不思議である。既存の利権は、既存の利権を持つシステムでは、壊せないということなのだろうか? 

 最後に、極論すれば、ここで書いた事で違法行為として訴えられたら、後悔する事がひとつある。それは、お金を出して
新聞を読んだ事。読まなければ、苦しまずにすんだのに・・・新聞を読んだ為に犯罪者になってしまうのか・・・後のまつりである。・・・と言う事にならない事を祈る。祈るしかない!?。
参考リンク
『Netlaw』http://www.netlaw.co.jp/index.html
 このホームページの目的は、まず第1に、著作権法とIT関連法の最新情報をお届けすることにあります。
 このホームページの目的は、第2に、弁護士荒竹純一の著作権法などに関する著書に関し、リアルタイムで内容の改定をしていくことと、編集上の制約から書籍に収録できなかった情報を提供することにあります。
追加
要約もいけないらしいと書いたが調べていたら、本当にそんな事を言っている新聞社を見つけてしまった。下記の新聞社である。
読売新聞(著作権について)http://www.yomiuri.co.jp/copyright/copy_j.htm
・要約紹介であっても、無断で行えば著作権を侵害することになります
 原作品を読まなくても内容が分かるような要約は、著作権法上の「翻案」に当たり、著作権者の承諾が必要です。利用が認められるのは、作品自体の存在だけを紹介するごく短い要旨程度のものに限られます。
http://www.yomiuri.co.jp/copyright/pn_copy6.htm
追加の追加
インターネットの世界の利権と独占を誰かが画策しようとしたのである。が、できないと気付くまでにたいして時間はかからなかった。】と書いた。よくよく考えると、今は、インターネットを使って、この国を支配しようと画策する人々がいるようだ。
註・著作権に関する日経新聞のページが捜せなくなってしまいましたので、全文をお知らせできません。これ以上、ここに載せるのも不愉快なので、これで終わりにします。


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